岩手山・八幡平・安比高原50kmトレイルについて
岩手県と秋田県の県境を南北に伸びる奥羽山脈を形成している岩手山、八幡平、安比高原の全長50kmに及ぶ山岳地帯は、標高1500mから山脈の最高峰でもある岩手山2038mへと連なるブナからダケカンバ、ミズナラ、オオシラビソなどの豊かな自然に囲まれた我が国でも有数のロングトレイルを形成しています。
この山脈は、那須火山帯に属し、コース上には活発な火山活動を垣間見ることができ、また、登山口には温泉が湧きでており岩手山や八幡平の日本百名山はもちろん延々と連なる峰々を踏破した後の山旅の疲れを癒してくれます。
トレイルの北の基点となるブナの駅周辺は、全国有数のリゾート地、安比高原スキー場の中核をなし、その後背地には、我が国有数のブナの原生林やブナの二次林が形成されています。また、茶臼岳から八幡平周辺は国立公園八幡平の中心として、春から秋にかけて多くのハイカーが、池塘に咲く高山植物の探勝を楽しんでいる姿が見られます。ここから望む秀峰岩手山は、はるか彼方に見えますが、トレイルの積み重ねを山頂は待っています。八幡平アスピーテラインを横切ると東北最高点の温泉藤七温泉の湯煙が待っています。
これより標高1500m級のなだらかな稜線を進むとトロイデ火山の畚岳をはじめ、その名のとおりオオシラビソの諸檜岳、南面が大きく切り立った瞼岨森、そして裏岩手連峰の盟主大深岳と続きます。50kmトレイルも半分が背後へと過ぎていきます。小畚岳から三ツ石山の稜線は、庭園のような自然美を見せてくれます。秋には、一面の紅葉が待っています。
三ツ石山山荘を過ぎると大松倉山、犬倉山、姥倉山とトレイルは、どこまでも続きます。姥倉山を過ぎるといよいよ岩手山が目の前に迫り、広大な西岩手火山の火口が現れ、活発な火山活動を続ける黒倉山の鞍部を経由して大地獄谷分岐経由で八ツ目湿原へと入ります。天気の良い日は、鬼ケ城の稜線を通るのも楽しい。
ここからは、西岩手火山と分かれ急勾配を上り詰めると盛岡不動平にでます。
岩手山頂は、もう一息です。2038mの山頂に着くと360度のパノラマが待っています。北の方に目をやると一歩一歩歩いてきた裏岩手連峰や八幡平、安比高原の山並みが広がり、トレイルの疲れを癒してくれた藤七温泉、松川温泉の湯けむりが見えます。
トレイルの終点である岩手山焼走り国際交流村も、もうすぐ。遠くには、早池峰山、鳥海山、秋田駒ケ岳の山並みが望まれます。途中平笠不動避難小屋で一息入れ、コマクサの大群落に50kmに及ぶトレイルの疲れを癒され登山口に到着。難儀ななかに思い出深い山旅に感謝のひと時です。
岩手山・八幡平・安比高原50Kmトレイルの整備や維持管理は、環境省、岩手県等が中心になって行っていますが、民間ボランティアの活動も活発で、八幡平周辺では、環境省パークボランティア、八幡平自然散策ガイドの会、自然公園指導員、岩手山では八幡平市山岳協会などの団体が長年にわたり山小屋管理、登山道整備、清掃活動を行っています。
岩手山・八幡平・安比高原50kmトレイルの誓い
私たちは、「岩手山・八幡平・安比高原」の輝(ひかり)の大地の恵みに感謝し、
トレイルを大切に守り次世代へ引き継ぐことを誓います。
- トレイルの保全に努め、稀少動植物の保護はもとより、動植物との共存を図るとともに外来種の駆除、侵入防止に努め自然生態系の持続的保全に取り組みます。
- 自然が与えてくれた恵みに感謝し、火山地勢、高山植物、歴史と文化を次世代へ引き継ぎ、天賦の景観を広く世界へ発信します。
- トレッカーをはじめ訪れる多くの方々に感謝とおもてなしの心で接し、安全でさわやか、希望と感動を与えるトレイル空間の醸成を図り、交流のステージとして大切にしていきます。
- 地域の物産、産業資源を広く紹介し、トレイルと街の賑わい創生のため連携を大切にして地域社会の活性化を推進します。
- トレイルの約束
- 植物や登山道等の保護のため、トレイル内を歩く。
- ゴミは、捨てない。見つけたら拾い持ち帰る。
- キャンプは、指定の場所で行ない、指定地以外での焚火は禁止。
- トイレは、施設を利用し、自然を汚さないようにする。
- 山小屋の使用後は、清掃、整頓を心がける。
- 入山カードに記入する。
- 天候が急変するときがあるので、装備、食糧を点検して入山する。
安全で楽しい山旅のために
岩手山・八幡平・安比高原50kmレイルは、体力的に上級コースの岩手山エリア、中級コースの裏岩手連峰エリア、八幡平エリアそして安比高原エリアに区分されます。
全コースとも標高は2000m級から1500m級で北アルプス等に比べて標高は高くはありませんが、緯度は北緯40度前後と北国の装いの山岳地帯ですので甘く見ないで下さい。
特に、岩手山は独立峰で毎年、真夏でも低体温症による遭難、下山時の転倒による骨折、捻挫等の事故が発生しています。
全コースとも、雪解けは6月に入ります。コースの所々に残雪が残りコース確認に慎重を要します。場所によっては軽アイゼン、地図、磁石、GPS等の携行と位置確認に留意して下さい。
携帯電話は必ず補助バッテリーもお忘れなく。残雪は、岩手山、三ツ石山、源太ケ岳の急斜面では6月半ばまで見られます.、
トレイルの秋の訪れは早く、高山植物は8月には秋の花と変わります。9月に入りますと草紅葉やカエデ、ダケカンバ、ミネコザクラなどが色づき始めます。10月には、稜線や山頂付近は初冬期の趣となり冬山装備での入山をお願いします。
また、気温の低下で携帯電話の電力低下が顕著になりますので注意して下さい。
入山にあたっては、最寄りの駐在所、登山口の登山届ボックスに登山届を提出して万一の事故に備えてください。
50㎞トレイルコースでの遭難の特徴は、岩手山では、無雪期は、転倒事故、体調不良が多く、積雪期や初冬季には滑落、低体温症、道迷い等での重大遭難事故が発生しています。
裏岩手連峰では、残雪期での道迷いや積雪期の源太ヶ岳での滑落、雪崩による重大事故が発生しています。八幡平、安比高原での登山者による事故は転倒、残雪期の道迷いの発生が見られます。
天候に注意し体力に合った登山に心をがけて下さい。また単独でに入山は出来るだけ控えましょう。
登山コース、下山予定等を家族、友人、所属している登山グループ等に教えてから入山して下さい。
このことにより、万一の場合、迅速な捜索活動が可能となります。
入山前に、地元八幡平市役所、観光協会等から情報を入手して入山することもお忘れなく。
岩手山・八幡平・安比高原50kmトレイルでよく聞かれる質問
- 50kmトレイル踏査の日数は?
- 体力や経験等にもよりますが二泊三日、少し頑張れば一泊二日くらいです、その場合は、途中、大深山荘か三ツ石山荘に一泊が理想です。また、コース近接の松川温泉、藤七温泉で途中の宿泊での縦走もお勧めです。
- 50kmトレイルの起点と終点はどこですか。
- 協議会で決めているのは、岩手山焼走り登山口と安比高原ブナの駅登山口です。
- 自家用車での移動の場合、車の配送業者はいますか。
- 地元には、配送業者はいません。複数で登山の場合は、事前に下山口に配車しておくことをお勧めします。登山口周辺に宿泊を予定している方は、宿泊施設と事前に相談して下さい。あとは、下山後、最寄りのタクシーを利用するしかありません。
- 荒天の場合のエスケープルートはどこですか。
- 岩手山では、馬返しコース、上坊コース、裏岩手連峰では、松川温泉、網張温泉、藤七温泉。
八幡平、安比高原では、藤七温泉、八幡平山頂レストハウス等があります。 - 50kmコース上の水場は?
- 岩手山八合目御成清水、姥倉山と犬倉山鞍部水場、大深山荘南側お花畑水場、藤七温泉、八幡平黒谷地熊の泉、八幡平山頂レストハウスです。
なお、岩手山八合目避難小屋御成清水は真夏の好天で渇水の時がありますので注意してください。 - テントは張れますか。
- 50kmトレイルコースは、安比高原周辺を除き八幡平国立公園内となっていますので幕営は禁止されていますので注意して下さい。焼走りと松川温泉、ブナの駅には、幕営は出来ますが、管理人に申込みをして許可を得て下さい。
- 携帯電話は、全コース通じますか。
- 稜線上は、概ね交信できます。但し、機種、気象条件や谷沿いの地形等で電波を拾えない箇所がありますので注意してください。
- 最寄りの警察、消防は。
- 50kmトレイルコースは、岩手警察署、八幡平消防署の管轄ですが、稜線の南側、西側の一部は、盛岡西警察署、秋田県仙北市の管内となっています。
- 八幡平ドラゴンアイは、いつ頃見どころですか。
- 例年5月下旬から6月上旬の八幡平の鏡沼の雪解けの状況によって出現の度合いが変わります。
したがって地元では「運が良ければ見られる八幡平ドラゴンアイ]と言っています。
八幡平観光協会に最新の状況を逐次掲載していますのでご覧ください。 - ツキノワグマの出没や被害は。
- 50kmトレイルコースは、昔からツキノワグマやカモシカ、ホンシュウキツネの生息地です。これまで目撃情報はありますが人身事故の情報は寄せられていません。
直接遭遇することは稀ですが、クマ等は警戒心の強い動物ですので、出会い頭の事故を防ぐため鈴やラジオ等を身につけて熊へ自分の存在を知らせる等の工夫をして下さい。また、食べ物は絶対に捨てないでください。
岩手山・八幡平・安比高原50kmトレイルの旅が思い出深い楽しい山旅になることを願っています。